少々唐突な話になりますが、今札幌市内で打合せがあるビルの一角や、駐車場に車を停めて目的地に向かう途中、運転中の道々で、安田侃さんの彫刻に出くわすことがあります。
「彫刻を見に行こう」と意気込んで入館料を払い、心身共に準備万端で向き合う彫刻とは違っていて、いつのときも目的地へ向かう途中に「ばったり」出くわす彫刻たちは、自分の無意識を意識させてくれ、時には「あ、そうだった、そうだった。ここにこうしてあるんだった。ん? 2週間前の時より紅葉が進んだな」とか、そんなことを思わせてくれたり。なかなか不思議な出合いの連続です。
人々が闊歩する地下歩道空間では、彫刻の周辺だけ時間が止まっているような、そんな感覚も抱きます。
先日も久しぶりに道庁赤レンガ前に立ち、すっくとそびえる黒いブロンズの「帰門」とやらを見上げ振り返ると、銀杏の並木から金色に輝く葉がひらひらと降り注ぎ、その並木の向こうにスゥーッと真直ぐな道が東に伸び、札幌の町並みを見渡せる心地がしました。
安田さんご本人がこの展覧会に寄せて「作品によって景観を浮き彫りにする」とおっしゃっていましたが、「ばったり」と同時に味わう新鮮な感覚や改めて感じる町の風景を楽しめるのも、あとわずか。
安田侃の野外彫刻展「街に触れる」は11月20日まで。
11.11.13