「天窓から樽前山が望めるこの部屋をアトリエとして使いたいと思うの。」
この一言が始まりでした。案内されたその一室は、半ば収納スペースとして使われている状況でした。が、屋根の傾斜を受けて三角に仕切られているその空間には、遠くに樽前山が一望でき、豊かな空間の可能性を感じることができました。
珪藻土で仕上げることで空間全体が柔らかな光に包まれ、この場の雰囲気を最大限に活かすことを目指す。更に収拾がつかなくなっている大量の書籍を収納できる本棚と水墨画を描くTさんにとって、寛ぐ椅子と机ではなく、描くための椅子と机をオーダーメイドすることで、この要望に応えようとしました。
実直な仕事で信頼を寄せている湯ノ里デスクの田代さんと佐々木さんが家具を運び込んで工事完了。壁一面に取り付けられた本棚と、ウォールナットの無垢材で贅沢に仕上げたテーブルからは静かな迫力が漂っています。
わずか5帖ほどの一部屋が、ある重厚感を持ったアトリエへと変貌しました。後日談として、東京にお住まいのご子息が帰省された際に、その部屋に寛ぐための椅子を運び込み、天窓の下で読書をされていたと伺い、豊かな空間の創出にも成功したのではないかと思っています。
12.05.29