2月の「出来事36」でお知らせしたとおり、JIA主催の第12回環境建築賞で「美幌の家(美幌町・びほろエコハウス)」が優秀賞を受賞し、その表彰式が5月31日に東京の建築家会館ホールで行われ、私堀尾も出席してきました。
当日は住宅部門の設計者のほかに一般部門の設計者、更にはそれぞれの建築主の方々も参加。まだ朝晩は寒いと感じるくらいの北海道とは違い、既に汗ばむほどの暑さだった東京で、多くの方との出会い・再会の時間ともなりました。
作品応募から表彰式まで、ほぼ1年という長丁場でしたが、事務所開設から取組んできた、「自然と人をむすぶ家づくり」がひとつのかたちとなり評価をいただいたことに感謝しています。また、この間の数々の出会いで得た多くの刺激を今後の建築設計へつなげていければと思っています。改めて美幌町をはじめ、建設にあたりお世話になった方々や関係者の皆さまにこの場を借りて感謝申し上げます。
|
12.06.14
喜八の出来事 44
12.05.29
喜八の出来事 43
「天窓から樽前山が望めるこの部屋をアトリエとして使いたいと思うの。」
この一言が始まりでした。案内されたその一室は、半ば収納スペースとして使われている状況でした。が、屋根の傾斜を受けて三角に仕切られているその空間には、遠くに樽前山が一望でき、豊かな空間の可能性を感じることができました。
珪藻土で仕上げることで空間全体が柔らかな光に包まれ、この場の雰囲気を最大限に活かすことを目指す。更に収拾がつかなくなっている大量の書籍を収納できる本棚と水墨画を描くTさんにとって、寛ぐ椅子と机ではなく、描くための椅子と机をオーダーメイドすることで、この要望に応えようとしました。
実直な仕事で信頼を寄せている湯ノ里デスクの田代さんと佐々木さんが家具を運び込んで工事完了。壁一面に取り付けられた本棚と、ウォールナットの無垢材で贅沢に仕上げたテーブルからは静かな迫力が漂っています。
わずか5帖ほどの一部屋が、ある重厚感を持ったアトリエへと変貌しました。後日談として、東京にお住まいのご子息が帰省された際に、その部屋に寛ぐための椅子を運び込み、天窓の下で読書をされていたと伺い、豊かな空間の創出にも成功したのではないかと思っています。
12.05.13
喜八の出来事 42
札幌以外のマチからも続々と桜の開花のニュースが届き、本格的な春を実感します。
花壇のチューリップもとりどりの色で咲き乱れています。
ちょっと郊外へ車を走らせると新緑が芽吹いている木々が心地良く、郭公の鳴声も聞こえてきます。
北海道は、本当に心地良い季節を迎えました。
新緑のなかを走りぬけ、北広島の黒い森美術館で開催されている盆栽家・君島信博さんの「10種の鉢と草木の盆栽展」に行って来ました。
君島さんの展覧会はこれまでにも幾度かお邪魔していますが、盆栽の静かな美しさとやさしさ、そして時に力強さを感じ、展示空間も含めたその完成度に敬服します。
今回は彼が個展の際にはいつも器を依頼するという小樽・忍路(おしょろ)の陶芸家・高田義一さんの器と盆栽のコラボレーション。
今回の展示のために特別につくられた器と、その器に最良と考えられる草木の姿の妙。
会場で目にした君島さんの言葉が印象的でした。
「盆栽に鉢合わせという言葉があります。歳月を掛けて盆養された草木と盆栽鉢との取り合わせで、形や大きさ、色彩などの調和を生み出す作業のことです。」
この考え方は、新たな建築と既にある風土(景観や土地の特徴)をつなぎ、魅力的な建築をつくりたいと願う私たちのそれと非常に近いものがあると感じられ、この想いを噛みしめながらしばし静かに10種の鉢と向き合う時間となりました。
展覧会は今月23日まで。ただし、開館は月・火・水曜のみですのでご注意ください。
12.05.02
喜八の出来事 41
春の陽気も行ったり来たり。なかなか春爛漫とはいきませんでしたが、札幌も数日前からようやく桜の花が開き出し、あっという間に木蓮やレンギョウも満開です。
喜八では、冬の間断熱のために窓を塞いでいた板などをはずし、窓から射し込む春の光を満喫しているところです。窓といえば、昨年10月にこのブログで紹介した窓枠から「ニョキッ」と現れていた緑が今年も生長中。生命の息吹を力強く感じる日々です。
これからは心躍る季節。
みなさんのマチの桜は咲きましたか?
12.04.16
喜八の出来事 40
ようやく春らしくなってきましたね。
今日はまた風が強く土埃も舞っていて、清々しい春の日という雰囲気でないのが残念ですが。
下川町のプロポーザルの報告からちょっと間が開いてしまいましたが、喜八の面々はその後も変わらずに建築と向き合い、奮闘する日々を送っています。
先日、札幌市内のとあるデザイン事務所の改修工事のお手伝いをさせていただきました。
なかでも打合せコーナーはあまり窮屈にならないように、ゆるやかに仕切ることを考えスタディした結果、滝澤ベニヤさんが開発したペーパーウッド合板を使い、写真のようなスペースを作ることが出来ました。小口を切り出すことで現れたポップなカラーのストライプが、軽やかな印象を増してくれています。
いくつかの出会いが形になった、嬉しい仕事のひとつです。
12.03.24
喜八の出来事 39
下川町から発表があった「一の橋地区バイオビレッジ構想」集住化モデル住宅の設計者選定公募型プロポーザルの募集は、2週間というかなりタイトなスケジュールではありましたが、エネルギー完全自給型を目指す30戸の集住地区を考えるということは、震災以降の日本にとっては大きな問題であるとも捉え、応募することを決断。
22日の提出期限ぎりぎりになんとか間に合いました。
今回も何人もの学生が昼夜を問わず手伝ってくれ、事務所スタッフと共にチーム一丸となっての作業となりました。が、本日下川町のホームページで一次審査通過者が発表となり、私たちは残念ながら通過することができませんでした。
ただ、このプロポを通じて思考したことは、建築をとおしてこれまで考えてきたことと、これからも考え続けてゆきたいと思っていることを再確認できたという点でも大きな財産となりましたし、今後の仕事にも活かしてゆけると思っています。
ご協力くださった方々、本当にありがとうございました。
12.03.11
喜八の出来事 38
12.02.21
喜八の出来事 37
寒い日が続いています。
今年の札幌は極端に雪が少ないですが、石狩空知地方を中心に記録的な大雪となっていますね。特に岩見沢市は今や全国区。積雪量は2メートルを超えているそうです。
そんな雪の街を通過してここのところ幾度か、とある場所へお邪魔しています。
私たちが手がける住宅の棚扉などの取手づくりをお願いしたいと思い、自分たちがイメージするカタチ、大きさ、指のひっかかりなどを伝え、いくつかの試作を重ねて、ようやく「いけるんじゃないか」というものになってきました。
プロの手仕事に対して「すごいんです」というのも少々失礼な話かもしれませんが、あれよあれよという間に要望どおりのものを創ってくれます。
その感触を手で確かめて、更に要望を伝え...というやりとりを繰り返す時間は、なかなか楽しいものです。
このあと完成の住宅で早速デビューとなるはずです。
それほど目立つ場所ではありませんが、お施主さんにとっては毎日触れる場所。
心地よいものを。その一念です。
12.02.07
喜八の出来事 36
今日は嬉しいお知らせを2つ。
ひとつは昨年9月の「喜八の出来事29」でもお知らせした、JIA主催の第12回環境建築賞で「美幌の家(美幌町・びほろエコハウス)」が優秀賞を受賞できたこと。
もうひとつは「当麻の家」がアメリカの建築アワードを受賞したことです。
ただいま
こちらで受賞20作品をご覧いただけます。
今後更に何らかのかたちで紹介・掲載されることが分かりましたら、またお知らせさせていただきますが、思いがけず嬉しいニュースが重なって、スタッフ一同喜んでいます。
関係者各位様、ありがとうございました。
12.01.26
喜八の出来事 35
「誕生する子どもを迎える喜びを地域の人々で分かち合いたい」
旭川大学大学院 磯田ゼミのそんな会話から始まった「君の椅子」プロジェクトをご存知ですか?
東川町、剣淵町、愛別町の3町で「新しい市民」となった子どもたちに「生まれてくれてありがとう」の想いを込め、居場所の象徴としての「椅子」を贈り続け、過去5年間でその数は385脚にも。ゆっくり、じんわり豊かにその輪が広がっている取り組みです。
そして昨年の東日本大震災を受け、私達日本人が決して忘れることのない3月11日に岩手、宮城、福島の3県に誕生した104の命に「希望の『君の椅子』」を贈ることを決めたと聞き、わずかばかりの協力金を持参し、大五ビルヂング2階の「君の椅子」工房学舎を訪ね、代表の磯田さんとお話しする機会がありました。
親兄弟、親族も命を失ってしまった哀しいその日に、生まれてきてくれた我が子の誕生を心から喜べないような親御さんの複雑な心境にも「喜んでいいんだ」と、変化が...。
直接届けに行くことで「生まれてくれてありがとう。君の居場所はここにあるからね」の気持ちをしっかりと伝えることにもこだわり、磯田さん自身も出向いているとか。
その時々のお話を伺うにつれ、死者・行方不明者が約2万人とも云われる未曾有の被害をもたらした現実を前に、自分が出来ることを改めて問う時間となりました。
「君の椅子」プロジェクトについての詳細は、こちらをご覧ください。