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12.12.07
喜八の出来事 53
冬期閉館中の12月のこの日、トーテムポールの一部「オトイネップタワー」を屋内に、人力で運ぶという知らせが届いた。 このトーテムポールは、1980年に、ビッキが彫刻仲間数人と彫り上げた15mもの大作で、建立の際には音威子府の駅前まで大八車に載せつつ人力で運んだという。 その時の行列の写真や映像を見ると、巨大なそれを村民総出で運んでいる様に心打たれる。 風雪にさらされ腐食が進んだことで村は撤去を決め、その下部4.5メートルをエコセンター前に建立し来訪者を迎え入れていた。 今回はこのシンボリックなオトイネップタワーをゆっくりと自然に還すべく3モアの展示室「トーテムポールの木霊」に移設保管するという。しかもまた、人力で…というところに魅かれ雪道を北へ車を走らせた。 案内は13時~となっていたが、ユニックが到着した12時半頃から作業はスタートし、13時には作業の7割は済んでいる状況だった。
…にも関わらず、次々に集まってくる村の男たちは、戸惑いながらもすぐさま作業の輪に加わり、かけ声と共に呼吸(いき)を合わせ、侵食が進みもろくなった木塊を丁寧に、力強く、なんとか屋内に運び入れた。 途中、縦に割れてしまうアクシデントはあったが、村の男たちに三度(みたび)抱えられている心地はどのようなものであったか。 全身から湯気を立ち昇らせ、力を込める村の男たちは、気づけば30人を優に超えている。 自分もその末席に身を置くことが出来た…という事実。 ビッキの盟友の1人でもある河上名誉館長は、春までには修復し我々に再び立ち姿を見せてくれると約束した。 次は新緑の頃、魂のこもった木塊に再会するために、この道を北に走ることになるだろう。
12.11.19
喜八の出来事 52
とうとう札幌にも初雪が降りました。
とうとう...と言っても、今年は観測史上2番目に遅い初雪だとか。
これからがいよいよ冬本番です。
喜八でも窓を覆い、寒さと屋根雪対策も万全。
すっかり冬篭りの構えです。
10月の上旬に敷地を見に行ったお施主さんの住宅のプランを、この1ヶ月間じっくりと準備してきました。
そして先日、ご夫妻を喜八にお迎えしての第一回目のプレゼン。
ご主人が「どんなプランが出てくるか楽しみで、昨夜はあまりゆっくり眠れませんでした」と。
私たちも緊張のなか、自分たちがこの敷地に対して考えたプランを提示しました。
「この敷地」、そうなのです。
そこは白樺の植林がなされた静かな場所で、道東の自然のなかに土地を求めたご夫妻の、これからのこの場所での暮らし方をもイメージしながら検討を繰り返しました。
何よりも自分たちが敷地に立った時に感じた、感動にも似た感覚を大切にしながらの思考の時間。
勿論こちらのほうが、より緊張でした。
後日ご主人より「素晴らしい案をご提示頂き、興奮のため昨夜もよく寝られませんでした...」とのメール。
この興奮と共感を実際の建築に。
それが私たちの日々の仕事です。
12.11.04
喜八の出来事 51
雪虫も飛交い、初雪近し...の感がますます強まってきていますが、本格的な冬を迎える前に秋の実りについて。
喜八の菜園の野菜たちはついこの間までピーマンが収穫でき、まかない料理に使っていましたが、今日はスタッフの野菜畑から大根とカボチャ、筋なしいんげんが届きました。
早速調理しカボチャ添えのカレーと、大根といんげんのサラダ、カボチャの煮物を完成させました。
今年はトマト、茄子、ズッキーニ、枝豆、きゅうり、バジル、大葉、ピーマン、ししとうなどを育てましたが、数年ぶりにズッキーニの出来が良く、ずい分といただきました。
特に菜園の野菜たちが喜八の食卓を彩っていた夏から初秋の頃までは、時には食べきれないほどの実りを与えてくれました。
本当に猫の額ほどのスペースですが、この小さな場所が私たちに伝えてくれるものは、その実りも含め相当大きなことなのだと実感します。
12.10.16
喜八の出来事 50
今回の住宅は家族4人で暮らす家。最初にいただいた要望は、 ・仕上げには出来るだけ自然素材を使いたい。 ・家族が揃ってBBQなどが出来、多少の雨にも対応出来るような場所が欲しい。 ・こどもさんたちの勉強机を共用スペースに設けて、家族の気配がどこにいても感じられるような家が良い。
これらの要望をもとに、1年ほど時間をかけて打合せを重ね、ゆっくりと検討しプランを練ることで、落ち着きのある良い空間を作り出すことに成功したのではないかと思います。 家族の大切な願いでもあったBBQスペースは、光を透過する屋根付の半屋外の場としてこの家の中心に据え、玄関扉を開けるとスーッと視線が通り外の庭まで見通せます。 お施主さんにも喜んでいただけたことが何より。 これからゆっくりと家族の時間を刻むこの家は「ウチ庭のある家」と名づけました。
12.09.26
喜八の出来事 49
早速、満面の笑顔で迎えてくれた鈴木くん。全ての作品づくりについて、製作過程の出来事を織り交ぜながら会場内を案内してくれました。彼の言葉が加わることで、作品がより生き生きと生命感を持って感じられたことは幸運な体験のひとつでした。 また会場内では、様々なイベントがアートがある場所や空間を利用して行われていて、人々が楽しそうに集っている姿が印象的で、近所の小学生もアート作品を活用した歌のイベントに参加していたり…。
この場所では、アートを見るだけではなく、触れ、活用し、空間を体感することで、人→アート→自然→アート→人というような大きな循環、大きな生命の広がりを意識できる可能性が感じられ、ながく続くことを願いつつ帰路に着きました。
12.09.02
喜八の出来事 48
昨年、築35年以上の住宅を改修したS邸も、玄関浴室まわりの寒さを改善したいということが改修に踏み切った大きな理由だったとか。 玄関扉を断熱気密性の高い木製の扉にし、床は石張り、壁は珪藻土…と、自然素材にもこだわり、外壁も塗壁に。
この改修が縁でその後、40年近く使い続けている椅子など家族にとっても思い出深い家具のリニューアルのお手伝いもさせていただきました。 新築の物件にはゼロから創りあげる醍醐味がありますが、今まで使っていたモノに手を加えて再生させるリニューアルの仕事のサポートも、私たちにとってはまた、大きな意味を持つ大切な仕事のひとつです。
12.08.17
喜八の出来事 47
お盆休み。みなさん、ゆっくりされましたか?
喜八の面々も、なんとか仕事に区切りをつけて、幾日かの盆休みをいただきました。
私堀尾も白老の実家に滞在しつつ、「仙人の森」でそば打ちに挑戦とあいなりました。
途中幾度も軌道修正をしてもらいながら言われるままに、あるいは手本どおりに水をまわし入れ、捏ね、菊練りを経て空気を十分に抜き、「猫の手」さながらに柔らかく拳を握り、長いのし棒を操りながらゆっくり、軽快にそばを延し。
ここからはこれを一気に「切り」。とはいっても、まぁ、そこは初体験。なかなかリズミカルに...とはゆきませんが、見てくれだけはそれっぽく。
そばは「挽きたて、打ちたて、茹でたて」のサンタテですので、すぐさま茹でてもりそばで食しましたが、作業のもたつきがそのまま出来にも影響し、ちょっと切れやすい仕上がりでした。
これまでは、仙人(父)が打ったそばの食感やつゆの味などについて分ったようなことを言っていましたが猛反省。
何に於いても「つくる」ことはなかなか大変なことだということを実感した、四十代のオヤジの「夏休みの体験授業」。
密かに鍛錬し、納得のそばを打てるようになりたいものです。
12.07.28
喜八の出来事 46
暑い日が続いています。
築60年越えの喜八の内部は、十分な断熱が施されていないことと、風がうまく抜けないこともあり、この暑さがスタッフに直撃の状態で汗を流しながらの業務となっています。
先日、ダイニングキッチンの改修をさせていただいたKさんから早朝のメール。何か不具合でも起きたかと一瞬ドキッとしながら内容を読んでいると、改修後、すっかりKさんのセンスで使いこなされているキッチンの写真が添付され、その写真に対するコメントが送られてきたのでした。
その言葉からは、新しいダイニングキッチンを中心に、料理を楽しみ、生活を楽しんでいるKさんの充実が伺えます。家族からも、「たとえ納豆であっても、(新しくなった)この場所で食事をすると、なんだか数倍美味しく感じるね」という発言が聞かれたとか。
床はフローリング、シンク側の壁、テーブル、椅子も含めて木仕上げにするなど、自然素材をふんだんに使うことで心地良い空間作りを心がけた私たちにとっては、何よりも嬉しい言葉です。
Kさん愛用の調理器具は、どれも無骨な本物志向。私たちも手料理を幾度かご馳走になったのですが、素材の味を最大限に活かした味に大感激。
家族の食事時間が、より豊かになるお手伝いが少しは出来たこと、Kさんの心地良い居場所づくりに成功したことを感じながら、嬉しくメールを読み返す朝のひと時となりました。
12.07.02
喜八の出来事 45
北海道にも暑い夏がやってきました。直前まで肌寒いくらいの気候で雨が降ったり止んだり。なかなかカラッと晴れていなかったのに、急に30度越えなんてことになり、心も体もその急激な変化について行けない感があります。
そんな暑さのなか、喜八の菜園の野菜や緑たちは夏の強い日差しに負けまいと、グングン生長しています。
きゅうりはいくつも結実して日々大きくなっていますし、トマトも小さな丸い実がつき始めています。ここ数年はなかなか上手く受粉出来ずに苦戦していたズッキーニ。こちらは既に初収穫をし、スタッフみんなで美味しくいただきました。
なかなか順調な緑たち。門柱を覆う蔦にも勢いがあります。
昨年よりも更に生長を感じさせてくれるのは、喜八の窓下に2年前に植えたホップです。去年は窓の格子にちょっぴり絡んだだけで喜んでいたのですが、今年はその格子への絡み方も緩やかでどこか余裕があり、なかなか良い雰囲気なのです。
喜八で過ごした時間の経過を感じさせてくれる緑の生長は、食する楽しみがある野菜とは、また違った感慨をもたらしてくれています。