? 喜八の出来事|堀尾浩建築設計事務所
私たちスタッフは、事務所のことを親しみを込めて「喜八」と呼んでいます。
この建物の「愛称」みたいなものです。
生み出されることの大半は「喜八」が舞台です。


10.07.17

喜八の出来事 14

6月とは思えない暑さが続いた月末のある日、4月に完成した美幌エコハウスが緑の庇に守られている姿を見る機会がありました。
その立ち姿を見るだけではなく、撮影をするために1泊2日の日程でエコハウスに滞在することが出来たのです。

前庭の芝生によって緑に包まれるように建つエコハウスのカラマツの外壁は、数ヶ月前よりもあの場所に馴染んできているような良い色合いになっていましたし、さわやかな風がすぅーっと吹き込み、いく通りもの鳥のさえずりを感じながら迎えた朝の幸福といったら‥。豊かな自然を身近に感じられる贅沢を満喫することとなりました。
また実際にこの空間で寝泊まりをすることで確認出来たこともいくつかあります。
例えば、今回のテーマだった「森」。室内空間のなかでも光を受けて明るく室温も高い場所や、少し窪んでまるで木陰のようにひんやりとした感じを体感出来る場所。風や外の風景、あるいは窓外の自然の音を、より意識出来る場所などもあり、更にはそれぞれの個室が程良い距離を保ちながら、互いの気配を感じられることなども自分の感覚として感じることが出来たのは、大きなことでした。

今回の再訪で特筆すべきは、我々の日程に合わせて、エコハウスの建築現場で共に汗を流した工事関係のみなさん、町の担当の方など10人くらいが集まってくれ、酒を酌み交わせたことです。
現場が生んだ絆を再認識できた1泊2日でもありました。


「喜八の出来事 14」の続きを読む

10.06.20

喜八の出来事 13

喜八にとっての春の使者。黄(金)色の水仙の話から既に1ヶ月。つつじや山吹、チューリップなど、とりどりの花が次々に咲いては、私たちの目を楽しませてくれています。

初夏の気配も漂う6月。喜八の菜園には続々と新しい仲間が加わっています。きゅうり、バジル、茄子、ししとう。宿根草のシレネ・マリティマやベロニカ・ミセスホルトなど、喜八菜園もバリエーションが豊富になってきています。可憐な花を咲かせるもの、美味しい実をつけるもの。どちらも私たちの目や舌、心を満たしてくれます。

玄関前の蔦もいきいきとブロック塀を伝って生長していますが、今年の玄関前にはホップをあしらってみようかと...。ホップは生育も良く、窓辺の軒下などに這わせ、グリーンカーテンとして遮光にも一役買ってくれるとかで、最近は注目をされている植物だとも聞きました。
その、どれもがちゃんと気にかけ、水やりをし、雑草を取り、脇芽を摘んでやったり...と、愛情を注ぐことできちんと応えてくれるものらしいです。
そんなことくらいは菜園歴3年ともなれば、十分過ぎるほど承知しています。
承知したうえで、どのくらいの結果を残せるか、乞うご期待です!

「喜八の出来事 13」の続きを読む

10.05.17

喜八の出来事 12

少し前の話になりますが、今日は喜八の春をお届けします。
今はもう桜も咲いて、「今年は春が遅い」と言っていた北海道も、薫風が心地良い季節となりましたが、喜八にも春到来です。
北国に住む私たち(冬の寒さも厳しい北海道に住む私たち)にとって、春を感じるものはいろいろありますし、それは人によってもさまざまでしょう。
雪が無くなった途端に顔を出すクロッカスであったり、黄色い花が力強く咲く福寿草、あるいは土手などでよく見かけるエゾエンゴサクの青い可憐な花の群生を見つけた時、山の木々が芽吹く前にパッと開く辛夷の白い花に春を実感するかもしれません。
我々喜八の住人にとって最初に春を感じるものは、裏の畑の隅っこにひっそりと咲く水仙を発見した時です。

その黄色い花が隅っこで輝いているのを見つけると「春だなぁ…」としみじみ感じ入るのです。
そんな「春」との対面も今年で3度目となりました。

「喜八の出来事 12」の続きを読む

10.05.01

喜八の出来事 11

4月も下旬だというのに、まだまだ冷たい雨が降る夜、札幌エルプラザ環境研修室で実施された「第28回まちなか暮らし研究会~エコ編」で「育てる家の物語」の中間報告をさせていただくことになりました。
この「まちなか暮らし研究会」は「辻野建設工業株式会社」が主催する勉強会で、まちなかでのエコな暮らしをテーマに回を重ねている研究会で、毎回20名前後参加されています。
そのようなみなさんを前に現在WEB上で進行している「育てる家の物語」を通して、建築家という視点で家づくりへのアプローチや施主さんとのコミュニケーション、それらを踏まえた設計のプロセスなどにも触れつつ、約2時間お話させていただきました。会場からも質問や意見などが活発に挙げられ、逆に大変勉強になりました。
今後、「育てる家の物語」がどのように展開してゆくのか、今日のような時間も反映しつつ家作りのプロセスをご紹介できれば‥と思うのです。

「喜八の出来事 11」の続きを読む

10.04.01

喜八の出来事 10

美幌の家、完成しました。
昨年8月の環境共生型モデル住宅の公募プロポーザルにより設計・監理を任され、12月より工事着工をして4ヶ月。とても短い施工期間、そのうえ厳寒期の「シバレ」のなかでの厳しい工事となりました。
少しでも良いものをとの想いから、時には厳しい要望を出すこともありましたが、工事を進めてくださった現場の担当者や職人のみなさんは、私たちが描いた想いの部分をすくいあげ、現実のかたちにしてくれました。
また、こうした機会を与えてくださった美幌町役場のみなさまにも、あらゆる面で強力にサポートしていただきましたし、多くのみなさんの協力と理解のおかげで、完成の日を迎えることができたこと、感謝しています。
このあとは、この美幌エコハウスが、美幌町民のみなさんをはじめ、町内外の方々に喜びを持って迎えられることを願っています。

幾度も通った美幌の現場をあとにするときには、あたりにはまだ雪が残っていましたが、広葉樹が葉を広げ、自然の庇に守られた深い緑のなかに建つこの建物を、あらためて見に訪れようと誓いました。

お世話になったみなさま、本当にありがとうございました。










「喜八の出来事 10」の続きを読む

10.03.21

喜八の出来事 09

少しずつ春の気配が感じられるようになったこのごろ。
堀尾事務所でお手伝いをさせてもらった「ホテル大樹」のリニューアル工事が完了しました。

堀尾所長がかつて所属していた設計事務所で担当をしたご縁で、今回のリニューアルでもお声をかけていただきました。
レストランをフリードリンクラウンジへ。

「喜八の出来事 09」の続きを読む

10.02.25

喜八の出来事 08

まもなく3月。札幌の町では、ふと春の気配を感じる瞬間もあるくらいです。
そんな陽気に誘われて、今日は喜八を飛び出してみます。

「喜八の出来事 08」の続きを読む

09.12.14

喜八の出来事 07

美幌町「21世紀環境共生型エコ住宅(エコハウス)」がいよいよ工事着工しました。
去る8月24日に実施された、「21世紀環境共生型モデル住宅整備事業」のプロポーザルコンペにて最優秀賞に選ばれ、3月末の完成・引渡しを目指してこれまで設計作業を進めていました。11月末には敷地内樹木の移植や植裁整備も終えて、ようやく12月に建物工事着工までこぎつけました。
このプロジェクトは、環境省が推奨するエコモデルハウス事業として公募。全国20自治体で実施されるもので、北海道では美幌町と他に下川町が選定されています。
このエコハウスで、私たちが示したいことはいくつかあります。例えば、開かれた土間のこと屋根面からの採光と遮光のこと。緑豊かな敷地が持つ特性を活かそうといういくつかの取り組みも、自然と近しい家づくりを目指す私たちには大きなテーマでした。
が、その場所の自然と、その向こうに広がる美幌のまち並みを眼前に思うことの一番は、美幌町の人々に喜んでもらえるような、そんな建物にしたいということです。その想いは応募のためにプランを固めているときから何も変わってはいません。
その想いが「かたち」になる日も近い。工事着工は、私たちにとってはそういう想いを新たにする日でもあります。

「喜八の出来事 07」の続きを読む

09.08.04

喜八の出来事 6

お久しぶりです。今日は喜八を離れて所長のふるさと・白老から。

白老の中心街から山側に約10㎞入ったところに「仙人の森」はあります。
木漏れ日を心地良く感じながら、蛇行した道を更に山に入って行くと、道の左右に手入れがゆきとどいた芝生の空間があり、ぱっと開けた場所に突如コンテナハウスが姿をあらわし、私たちを迎えてくれました。
聞けば15年も前からコツコツと造り続けた「場」なのだと言います。私たちが見わたせる3000坪ほどの範囲には、コンテナハウスの他にも、大小さまざまの建物が点在し、物置、トイレ、五右衛門風呂、外部キッチンなどがそれぞれ絶妙な距離を保ちつつ、そこに「ある」のです。
奥には野菜などを作っている畑やハーブ畑、温室もあります。繁った木々のあいだには椎茸を栽培している場所まで。
ここには確かに豊かな自然がありますが、それはまったくの手つかず…ということではなく、適度に木々を間引いたりしながら程良く手を加えた、心地良い自然が広がっているのです。
目の前に広がるそれは、見たこともないような特別な風景とか銘木があるとかそういうことではなく、一見どこにでもある、自分がかつてどこかで触れたことがあるような、ある懐かしさを持った自然なのです。



驚くべき事は、この手入れがゆきとどいた場を、70歳にもなろうかというご夫婦2人で管理しているということ。にこやかに、この場所での出来事を話してくださいます。
作業の合間に、すぐそばに鳥のさえずりを聞き、緑を眺めながら飲むお茶が何よりも美味しい、と。
この2人は、堀尾所長のご両親であり、時には作業を手伝いながらその過程を見つめてきた所長にとってここは、「自然とつながる自分」を意識する原点ともいうべき場なのだとか。
故郷に戻り、半屋外の五右衛門風呂につかるたびに、その思いを強くするこの頃なのだそうです。

「喜八の出来事 6」の続きを読む

09.06.21

喜八の出来事 5

喜八では、新たなプロジェクトが動き始めたり完成したり、日々さまざまな事が起きているのですが、つい、野菜や植物たちの生長に心が動いてしまいます。



既にズッキーニや茄子の花が咲き、カモミールも風にゆれています。
裏庭の風景もだんだん初夏のそれらしくなってきました。
生長しているもの‥といえば、正面玄関前のブロック塀には蔦が勢いよく絡まってきています。
今年はとうとう塀の高さを越える勢いです。

去年より今年、おそらくは今年より来年‥‥と、緑の範囲が少しずつ広がってゆくことで経年を実感できる蔦は、喜八を事務所として改修した際に、どうしてもどこかに植えたかったもののひとつです。
無機質で時にはちょっと冷たい印象を与えてしまう灰色のブロック塀に、青々した蔦が伸び緑の塀になる日を楽しみにしています。

「喜八の出来事 5」の続きを読む